次進塾メイン講師の武沢です。経営者が変わることで会社は変わる。これは数々の社長さんを対象に経営計画書を軸とした経営コンサルティングを行ってきた私自身の確信です。

ただ、そうお伝えすると、やはり一定の方は「自分にはできると思えない、引っ張っていく自信がない」「経営計画発表会をやりましたが、社員からの反応は乏しく、翌日からの仕事にも何一つ変化が起きませんでした」といった、お悩みの声を頂きます。

しかし、そう簡単に諦めてしまってはそこまでです

例えるなら、経営計画書を発表して、社員から反応があり、会社が変わっていくというのは、プロポーズを成功させるような物。やり方次第、内容次第で成功するかどうかは決まります。成功もすれば失敗もします。

ところが、経営計画についてはなぜか「こんなにがんばって作ったのだから受け入れてくれるに違いない」と甘い期待をしてしまうものです。当然、単なる儀式のような発表会を毎年やっても意味がありません逆に、たった一回の発表会で会社を劇的に変えることだって可能なのです。

リーダーシップがないと思い込んでいる社長もいます。いままで一度もリーダーになったことがない人が経営者になることも珍しくありません。しかしそれでも、自分を変え会社を変えていける物なのです。

例えばこんな例があります。

事例1:沖縄でタウン誌を発行しているU社長

沖縄のU社長も自分にできるのか、リーダーシップを出せるのか気にしながら社長業10年目を迎えられていました。ある年の夏、沖縄の恩納村(おんなそん)で私が「経営計画作成合宿」を開催したとき、私からの提案は以下のようなものでした。

100点満点の経営計画を作ろうと思って半年も一年もかかってしまうぐらいなら、60点でよいので来月に発表会をやった方が良い。社員をまきこんだ発表の仕方をすれば、一気に会社の空気は変わる。したがって、この一泊二日の間で経営計画を完成させちゃいましょう」。

沖縄でタウン誌を発行しているU社長もその合宿に参加していました。そして合宿中に経営計画を完成させました。後日、それを私に郵送し、添削を求めてこられました。私は気づいた箇所を赤ペン を入れて戻し、U社長は発表会に臨みました。

その日の様子をU社長のメールからご紹介したいと思います。

・・・  経営計画発表会!が無事に終わる事ができましたのでご報告させて頂きます。 とても有意義な一日となりました!やって良かったの一言です。 どのような形で武沢先生に当日の様子をご説明すればよいか悩んだ結果、 当日の時間の流れにそって読んで頂いた方が伝わるのではないかと、スケジュール順に書かせて頂きます。

  • 朝 8:00に会社へ集合!(通常は 10:00)
  • 朝の日常業務 8:00〜9:30
  • 経営計画発表会、準備説明 9:30〜9:45

その後、 カフェテイーダ、ラウンジルームにて経営計画発表会 10:00〜12:30  ※ホテルのラウンジルームのような空間でした。

結論:大成果!!! 非常に反応が良く、社長の想いが伝わったのと同時に、スタッフ発表の時間では、社員たちがそこまで考えて下さっていたのかと、思わず涙が出てきそうになりました。

・・・

いままで商売の話しかしてこなった。こんな会社にしたいという経営の話をしたことはほぼ皆無だった。その理由は、U社長が答えを持ちあわせていなかったから。

この合宿でU社長は自分の言葉で会社の将来像、社員の将来像を成文化することができた。あとは発表してリアクションを待つだけ。幸いにしてこの場合は好反応だった。

普通なら発表会だけで行事が終わります。だが、U社長の工夫はこのあとにもある。発表会を終え、午後にはいちど通常業務にもどったそうです。その後、夕方から「経営計画書」を早速行動に移すべく、近所の公園を全員で清掃したという。 (その日のうちに何か新しい行動をする、という発想が秀逸)

そして夜は全員でボーリングと夕食会。さらにカラオケ。若いメンバーが多いとはいえ、非常に濃い一日で忘れがたい記念日になったらしいです。

すべてが終わったのは、深夜の12時半だそうで、沖縄的なゆったりした時間。最後は皆バテバテだったそう。 経営計画発表会の内容の工夫もさることながら、一日かけて行うもの、 という新しい気づきも与えてくれたU社長に感謝したいですね。

事例2:今年30歳。社長に就任したばかりのD社長

勉強会のあと受講者全員でビールを飲んでいたら「武沢先生、ちょっと見ていただきたいものがあります」と隣席に座った。彼が私に見せたのは社員からの手紙でした。この内容が、自信のなかったD社長の気持ちを大きく変えるものでした。やってみて初めて分かったことです。

なかなかの達筆である。 D社長の会社に勤務している女性パート(60代)からのものらしい。  経営計画書を作るうえで、社員から意見や提案を求めたそうで、多くの社員はメールで意見を述べました。だがこの女性パートだけは手紙形式。

拝見しておどろいた。冒頭の一行目から「え!」と自分の顔を手紙に近づけてしまった。その後も驚きの連続。 この手紙に何が書かれていたのか。 許可を頂いたので一枚目だけを原文のままご紹介します。達筆な手書きです。

・・・ ・生産性 効率向上 ・労働分配率ダウン↓ 給料アップにつながる ・利益分配→30%方式 お得意様に対しても1/3を限度に分配 ・無借金、無貸付、支払手形のゼロ化 ・入金、仕手、当座の把握 ・得意先増加(但し、新規取引与信は慎重に) ・品質、サービス、納期、納品書、請求書 ・社員満足向上 福利、給与・賞与、有給、食堂、更衣室、駐車場、作業着貸与、無事故・無怪我、平等と信頼、清潔感(照明、清掃、整理整頓、服装)、健康(元気、明朗、笑顔、活気) ・人材育成、個人能力アップの為の研修セミナー参加 ・有言実行、連絡、報告、信用、理解、責任、独立、株式、社長、持家、結婚 ・出入口の屋根延長、増築(雨対策) ・企業は人情だけでは成り立たない。けれど人情がなければ人はついてこない・・・

 

ここまででちょうど便せん一枚分。全部で四枚あるのだが私はその場で一気に読んでしまいました。後半は彼女の決意表明と社長へのメッセージになっていくのですが、それがまた泣かせる内容。

私は社員から提出された手紙やレポートをたくさん見てきたが、普通は「休みがほしい」「給料が上がるとうれしい」「急な残業依頼は困る」「社長のゴルフを減らしてほしい」「会議は短く」などの 個人的願望が述べられていることが多い。しかし、彼女の手紙に書かれていたものは完全なる経営者目線のアイデアなのです。

私は冗談まじりにこう申し上 げた。 「Dさん、この手紙の主はすごいですよ。このまま経営計画書にして発表しても通用するぐらいの内容です。大いにほめてあげて下さい」

恐縮するD社長に私はひとつ提案をした。この手紙をこの宴会場の皆さんに読み聞かせたいと。宴たけなわではあったが、私は立ち上がって手紙を朗読しました。最後の便せんにはこんな文面が。

・・・ 経営計画書づくりの主旨に当てはまらない事を書いてしまった様な気がします。 しかし今回、意見を提出するにあたり、社長が私たちに話された様に積極的に未来を考えることによって、色んなことがみえ、自分捜しにもなりました。 いままで仕事のことでも個人のことでも、夢や希望よりも現状に慢性化して満足している私がいました。

これからは慢性を進展へ、そしてさらなる満足へと考えていくことが大切なのだと気づかされました。 それは今日までに経験したことのないすばらしい社長からの提案でした。もっと私も若い時にこの事に気づいていれば……、今からでも遅くないですよね。

だんだんと普通の手紙になってしまい、破棄しようかと迷いましたが、なんせ話下手なので、このまま提出する事にしました。 (中略) 奥さまのような人になりたい。そして、社長の成長には驚きです。 私の子供もそうなってほしい、子を思う親の願いです。

“願えば叶う” と社長が言われたこと、信じてます。 小心で臆病なので、それも克服したいです。この年令なのに、いつまでも勤めさせて頂き、信頼して内勤も任せてもらい、そして家族の様にして頂き、感謝しております。

有難うございます。 この会社に入社して本当によかったと思っています。改めて、より一層励みますので、これからもよろしくお願い致します。・・・

 

あれほど盛り上がっていた宴会場が水を打ったように静かになった。女性パートさんと同世代とおぼしき女性社長は目を真っ赤にしておられた。

そういう人が仲間にいる会社は強いね

社員はスタンバイできている。あとは社長が正しくリードしていくだけ。

実際にやってみることで、気付けることはたくさん有ります。最初からできないと諦めるのでは無く、やってみる。どうしたらうまくいくか、何度も試してみる。その繰り返しで経営者も会社も変わっていきます。

1度や2度、暖簾に腕押しだったとしても、内容と伝え方を追求することで一気に堰を切ったように変化が訪れます。もちろん、あなたにもです。