第3講 野望を数字目標で表現する!
第14期『経営次進塾』第3講は、2017年7月21日(金)・22日(土)2日間に渡り開催された。
今回のテーマは『財務計画』。経営者の思想を数字に落とし込むというサブタイトルが付いている。この言葉通り、どのような思いで未来を描くのか?具体的な数値として見える化する作業だ。
数字に苦手意識を持つ経営者も少なくないようだが安心して欲しい。
武沢先生からのレクチャーによって、重要視すべきポイントが見えてくる。
受講生たちはいつもよりも緊張の面持ちで
集合した。まずは、前回のテーマである『顧客創造計画』の課題発表からスタート。
我社の顧客創造計画
課題発表では武沢先生からのアドバイスの他、受講生同士のフィードバックからヒントを得ることが沢山ある。学びを活かすという視点、他業種からの視点、ユーザー・顧客としての視点など、あらゆる角度でツッコミが入り、さらなるブラッシュアップがはかれるのだ。
そして、今回は更に専門家の視点が加わった。
特別講師であり、次進塾の卒業生でもある
ライフストラテジー株式会社 代表取締役 雨宮茂樹氏だ。
“マーケティング=売れる仕組みづくり(売ろうとしてなくても)”
売ろうとしていないのに勝手に売れる。それは何も夢物語ではないのだ。
雨宮先生の緻密な解説により、何をどのようにをどう設計するかによって、その先の結果が格段に変わってくるということがよく理解できる。
そのエッセンスとして、受講生の顧客創造計画に対し、「そのターゲットは広すぎないですか?」「もっと具体的に言うとどんな人ですか?」と、設定するターゲット像についてのアドバイス。「口コミ強化のためのコミュニティを作ってみてはどうですか?」と、さらなる仕掛けについて具体的かつピンポイントなアイデアをもって指南していた。
そんな雨宮先生の講義内容を少し紹介しよう。
良い広告とは何なのか?
大手広告代理店から独立され、現在は中小企業を含むあらゆる企業をマーケティングの観点から支援されている雨宮先生。
マーケティングの原点に立ち戻って実直に支援される独立のきっかけになったのは、一枚の折込チラシの制作依頼だったそうだ。
なんと、20件の問い合わせ電話が掛かってこなければ倒産。そんな窮地に立たされた状況下で雨宮先生に声がかかったのだ。
まずは、あらゆるリサーチ。競合はどこなのか?競合が得意とすることは?
逆に弱みであると思われることは?そして提供する価値は?誰に提供するのか?現状はどうなのか?市場はどう変化しているのか?など、散々に調べ上げ、一筋の光を見出し制作へと落とし込んでいく。
そして、次進塾でもおまじないのように唱えた「何を」「誰に」「どのように」売るかだ。これをチラシにどう反映するのか。マーケティングステップの中で最も重要で基本的な考え方、それは【先頭を切れる分野を創造すること】なのだ。
雨宮先生は、折込チラシが入る当日に掛かった電話の数を30件だと報告を受ける。どれほどの安堵感だっただろう。そんな臨場感が伝わるエピソードだった。
マーケットニーズを的確に捉え、顧客の心に最初に入り込むこと。そう表現されている。まさにエピソードそのものではないだろうか。受講生たちの目は、それぞれのビジネスでどの分野で顧客のハートを一番乗りで掴むことが出来るのか?という想像に駆り立てられてキラキラと輝いているように見えた。
決算書の構造 ー経営の4Kとは?ー
いよいよ1日目の後半から、財務の講義に突入する。要となるのは経営の4Kという考え方だ。
4Kとは、経営に必要な考え方の頭文字を取っている。
- 高成長
- 高収益
- 好財務
- 好待遇
4Kを元にこれからの未来、5ケ年計画に落とし込んでいく。まずマスターすべきは、P/L(損益計算書)とB/S(貸借対照表)だ。
中小企業は税務署への提出が義務付けられている。経営の基本となる財務諸表だ。受講生たちはこの2日間で空で項目を言えるぐらいに成長している。
また、武沢先生からこんなアドバイスがあった。会社四季報や日経会社情報を独自でリサーチしてみることも良いだろう。コツコツと感覚を養うという意味がある。そして、どんな会社にしたいのか?その社長としての思想を財務計画に落とし込むのだと。
5ケ年財務計画
受講生は、未来5ケ年の財務計画を立て始めた。ポイントはいくつもある。特に損益計算書で指標としたい数値は営業利益率10%以上を目指すところだ。
世の中の平均が2〜3%であるなかで、我々は高みを目指し経営の4Kを達成したい。
そして、貸借対照表では自己資本比率。中小企業で24%、大企業では40%が平均のところ、我々は50%越えを目指したい。
武沢先生より、「現預金は月商の3倍を目指そう」と具体的なアドバイスがあった。受講生から、「借り入れをしている場合はどうなるのか?」という質問があり、「その場合は返済分を引いて月商3倍ですね!」と、軽快に返答があった。
最終的には、返済後の現預金を5,000万円以上になるまで慎重経営を。
“脱常識”で理想の経営像を抱いていこうと皆で誓った。
P/LもB/Sも簡単に完成するものではない。
経営者が手間暇かけて、思いを込めて完成させるもの。まずは好財務経営。
つぶれない会社の必須条件は、経営の数字の中身を把握出来ているか否かだ。
受講生たちは全身全霊で数値を作っていく。
ドラッカー『プロフェッショナルの条件』より
第3講のラストはおなじみドラッカーからの学びだ。「ドラッカーの提唱していることは古くから日本でも言われていること同じですよね」と説くのは、究和エンタープライズコンコードの松本社長だ。受講生一同が深く頷いた。
例えばこうだ。
“神々が見ている フェイディアスの教訓”という話がある。
紀元前440年のこと、フェイディアスがアテネ パンテオンの屋根に立つ彫刻群を完成させた話だ。彼は誰にも見えない部分まで彫って当たり前に請求するのであった。会計官は支払いを拒む。
だがフェイディアスは「神々が見ている」と答えるのだ。ドラッカーは、「神々しか見ていなくとも完全を求めていかなければならないということを、その時以来肝に銘じている」と記している。
松本社長は言う。「これは日本でも幼少期から親や先生に教えられたことではないか」と。「誰も見ていなくてもきちんとしなさい」だ。中国の古典“君子必慎其独也”から慎独(しんどく)という言葉もできている。
重要なことは万国共通。他のエピソードからもそれが伺える。経営者として何を大切にし行動するのか。それが問われる貴重な時間だった。
次進塾は折り返し地点。次回、第4講は内部管理について学ぶ。課題図書にはインテル元CEO
アンディ・グローブ著『HIGH OUTPUT MANAGEMENT』が出題された。採用・教育・制度など、濃い内容になりそうだ。
次回のレポートもお楽しみに!
Share8月
2017